先見ず「借金こそ財産」”愛情”が生んだ過剰投資

   大手、中堅の旅行代理店などの投票で選ぶ2003年「にっぽんの温泉100選」。
  鬼怒川温泉は「施設の完備」部門で全国1位に輝いた。

   「設備に金を掛けた結果だけどさ・・・・。抱えるものもおおきいよ」
  ふかふかのじゅうたん、きらびやかなシャンデリア、一面ガラス張りのロビー・・・。
  国内トップレベルと評価された設備を前に、ホテル役員は苦笑いした。
   バブル経済期、ホテルは設備投資に躍起となって豪華さを競った。

   先ごろ産業再生機構が支援を決めた奥日光のホテル四季彩の再建計画。「四季
  彩ブランドを構築し、ターゲット顧客層における知名度向上とリピータ獲得を目指す」
   柱に「プライベート空間の重視」を据え、個性を強調した。大幅な財務リストラをした
  上で必要な投資をする方針で、新たに一億円の設備投資プランを盛り込む。

 維持費計算せず

   右肩上がりに宿泊客が増えていたころ、鬼怒川温泉のホテルは、億単位の資金
  を投じて積極的にホテルの増改築に乗り出した。

   大半が足利銀行から融資を受けた。「どこでもいいからやっとけ的な発注方法。合
  い見積もりなんてなかった」「メンテナンス料とか維持費を計算しないまま。豪華一直
  線の考えだった。」

   豪華な施設と引き換えに、多額の借金を背負った。「施設は大きくきれいになった
  が、堅さは家業レベル」。老舗ホテル社長は経営姿勢に触れた。

   温泉街のホテルは軒並み年商の二〜五倍もの借金を抱え、身動きが取れなくな
  った。

   「そもそも約定道りに金を返すのは無理なんだよ。そんなことは銀行だってわかっ
  てるはずだ」
   中規模ホテルの社長も当時の増改築などで年商の三倍を超える。「収容人員を増
  やさなければ、売上が伸びないとゆうのが銀行の考え。それに乗ったおれにも責任
  があるけど・・・・・」。

   収容力と客室の稼働率ばかり追って「個性ずくり」の視点はホテル社長にも融資す
  る足銀にもなかった。

   「旅館業はもともと地味な商売。なのにバブルで金銭感覚がずれた経営者と銀行
  が、一気にもうけようと欲を出してこけたんだよ」

   ある小規模ホテルの社長は、バブル期の放漫経営を一笑に付した。

   近代化と効率化

   バブル期の経営者感覚・・。「借金こそ財産」「金利を払って元金は孫子の代まで」
  「銀行はつぶさないんだから、いっぱい借りた方がいい」。

   無責任な言葉が、堂々とまかり通った裏には、経営者個人の借金と受け止める家
  業意識が強かった。

   親子代々、自らのホテルに愛情を注ぐ経営者だからこそ家業意識は捨てきれない
  。

   再生機構は、家業的性格の強い経営の近代化・効率化の徹底をホテル再建のキ
  ーポイントに「家業からの脱却」を挙げている。

   ・・・平成14年7月1日 下野新聞記事 再生始動よみがえれ鬼怒川温泉より・・


   現在産業再生機構の支援が決まったホテル四季彩は、再建計画により、借入れ総
  額17億円に対し、足銀などから債権放棄約12億円が決定した。.


  「スクウェアヒルズオーナーからの一言」                                         

   バブル期から現在に至るまで、毎年越冬融資を受けているほど会社が実質上赤字
  でも高給を取り国内外の高級車を乗り回し、高級住宅に住んでいる大型ホテル経営者
  の給与を守るために、なぜ国は12億円もの国税を支援するのか? まったく理解でき
  ないのです。

  (個人企業の零細宿泊業には、越冬資金などとゆう融資は、どの銀行も100%行ってい
  ませんし、経営者は、赤字の時は給与はゼロ円ですし、冬場は、ハイ.シーズンの蓄えで
  しのぐことが常識なのです。)

   確かに、地域の雇用を安定させ経済再生をめざすとゆう、国の大儀明文は、理解でき
  ます。 しかし、これで本当に地域経済が安定するのですか?。

   私には、国は、国税12億円を一部の大手旅館ホテル業に投下して、多くの零細旅館
  ・ホテル、民宿、ペンション、新規宿泊業などを倒産に追い込もうとしているとしか思え
  ないのです。

   問題は、バブル期に豪華に増築・改築した大手宿泊業が、バブル崩壊後、銀行へ
  の返済元本を含めた原価を無視し、稼働率を上げる為、宿泊料金を超低料金化し続
  けていることにあるのです。

   国税を投入するなら、このことを無視せずに、豪華設備に見合った債権回収を目的
  とした利益を生み出す適正価格をめざすべきであり。それでも、2〜3年以内に回収の
  見込みの立たないホテル旅館は即時清算すべきです。

   再生の見込みの無い、現在業界のデフレの元凶となっているホテル旅館が清算さ
  れるならば、低料金でありながら適性宿泊価格を維持する他のホテル旅館や民宿、
  ペンションなどの集客数が増加することは確実でしょうし、新たな健全な設備投資や
  雇用の増強も生まれ、銀行も優良顧客が増加するでしょう。本当の意味での地域経
  済の再生が実現されるはずです。

   地域経済を「みかん箱」にたとえるならば、大きな腐ったみかんは、手遅れになる
  前に早急に取り除かねば、箱ごと腐ってしまうことになることは明白なことです。

   そして、銀行を「みかん箱」にたとえるならば、腐ったみかん箱は足利銀行ではな
  かったでしょうか?

   来年から、売上1000万円以上の事業所は収支に関係なく消費税を支払うことにな
  ります。 国には、無駄な国税の使い方をして欲しくないものです。

   日光・鬼怒川地区における産業再生のカギは、腐ったみかんの撤去にあります。

   大切な国税を使い、永久に仮死状態の大手旅館ホテルを助けることは、産業の再
  生どころか、新しい産業の誕生さえも封印させていることに、国や銀行は、早急に気
  ずくべきです。

   国や銀行は、目先の損失を回収することにやっきになって、地域経済全体の将来
  を見据えることを忘れているように思えてならないのです。



                      も ど る